高齢化が進む日本では、働きながら介護を行う人(ワーキングケアラー)が増加しています。仕事と介護の両立が難しいことから、やむを得ず仕事を辞めてしまう「介護離職」は、本人だけでなく企業や社会にとっても大きな損失となります。この問題を解決するためには、地域包括支援センターをはじめとする支援機関や、企業、地域社会が連携して、ワーキングケアラーをサポートする仕組みが必要です。本コラムでは、介護離職を防ぐための課題と具体的な支援策について解説します。
働きながら介護をする人が直面する課題
- 時間管理の難しさ
仕事と介護の両立では、時間の調整が最大の課題となります。仕事が忙しい中での通院付き添いや食事介助、家事負担が重なることで、時間が足りなくなり、精神的な負担も増加します。 - ストレスと心身の疲弊
十分な休息を取れないことで、ストレスや体調不良に陥りやすくなります。介護に関する悩みや将来への不安が重なり、精神的な余裕を失うケースも多いです。 - 職場での理解不足
介護のために遅刻や早退、休暇を取らざるを得ない場合、職場からの理解を得られないと、働きづらさが増します。また、介護の状況を職場に伝えることに抵抗を感じる人も少なくありません。
地域包括支援センターが提供できるサポート
- 相談窓口の設置
地域包括支援センターでは、介護に関するさまざまな相談を受け付けています。具体的には、介護サービスの利用方法や費用負担の軽減策、介護保険の申請手続きなど、専門家がアドバイスを提供します。 - 家族介護教室の実施
家族介護教室では、介護技術の向上やストレスケアの方法を学ぶことができます。また、同じ立場の参加者との交流を通じて、悩みを共有し、孤独感を軽減する効果も期待できます。 - 短期入所やデイサービスの利用支援
地域包括支援センターは、介護者が休息を取れるように短期入所(ショートステイ)やデイサービスの利用を推進しています。これにより、介護者が仕事や自分の時間を確保する余裕が生まれます。 - 企業との連携サポート
地域包括支援センターが地元企業と連携し、介護休暇やテレワーク制度の導入を促進することで、職場環境を改善し、介護離職を減らすことができます。
企業や地域社会の取り組み
- 介護休暇制度の活用
労働基準法や育児・介護休業法に基づく介護休暇や短時間勤務制度を周知し、利用を促進することで、従業員が安心して介護に専念できる環境を整えます。 - 地域の支援ネットワークの活用
地域の見守り隊やボランティアグループを活用することで、介護の一部を地域全体で担う仕組みを作ることが可能です。特に、一人で介護を抱え込むことを防ぎ、サポート体制を強化します。
まとめ
介護離職を防ぐためには、個人だけでなく、家族、地域、職場、行政が一体となって取り組むことが重要です。地域包括支援センターが相談窓口や教室を設置し、企業と連携して働きながら介護を続けられる環境を整えることで、多くの人が安心して介護と仕事を両立できる社会を目指すことができます。このような支援の中で、地域の信頼を築き、住みやすい環境を実現するために、包括的な取り組みを進めていきましょう。